8:春を思う

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 その言葉に、マルコは安心半分不安半分だ。エルカナは、確かに優しいけれども、それ故に厳しい人でも有る。いつも前向きな言葉をかけてくれるアマリヤとは違って、自分は突き放されてしまうのではないかと思ってしまうのだ。  マルコは思い出す。エルカナがまだ見習いであった頃に、両親を恋しがる自分のことを、その腕の中であやして、寝付かせてくれたあの温もりを。そして気づいてしまったのだ。いつしか、自分が求める温もりは両親の物では無く、ひとつ年上の、うつくしい修道士見習いの物であると言うことに。 「タリエシンさん」 「なんですか?」 「エルカナさんってすごくきれいじゃないですか? 正統派美少年というか」 「そんな感じはするけどなんであなたがいきなりそんな話を出したのかはわかんないですね……」  自分がエルカナに対して抱いている感情は、敬愛なのか、親愛なのか、友愛なのか、それとも恋慕なのか。マルコにはそれがどれであるのかわからなかった。ただあの華奢で冷たいけれども温かい手に触れ、腕に抱かれていたかった。  エルカナはアマリヤと一緒に修道士になったので、修道士見習いのための学堂にその姿は無い。いままで彼らが座っていた席は、新しく入った修道士見習いが使っている。その彼は、マルコとタリエシンが面倒をみるようにと言われている。自分も面倒をみる側になったのかと思うと、誇らしくもあり、寂しくもあった。     
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