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10:欠けたるひとり
四人が修道士になって数年。このままの生活が続くと思っていたところに、その出来事が起こった。タリエシンが助祭となり、隣の教区の教会へと異動する事になったのだ。
それを訊いて、マルコも、アマリヤも、エルカナも、これから善きことを成すようにと祝福してくれたし、喜んでくれた。けれども心のどこかで寂しさがあるのだろう、助祭を任命する儀式の後、マルコがタリエシンの部屋を訪れ、俯いて色々なことを話した。初めてこの修道院に来たときのこと、ここで学んだ様々なこと、一緒に過ごした日々、そして、晴れて修道士になれたあの日のこと。そんな事を、懐かしむように話した。タリエシンも、それをゆっくりと聴き、時折相づちを打つ。
ふと、マルコがこう言った。
「タリエシンさんは、今まで面倒をみて下さった方たちから離れても、大丈夫なのですか?」
その問いに、タリエシンは困ったように笑う。
「うーん、そうですねぇ……」
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