10:欠けたるひとり

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 正直なことを言うと、今まで面倒をみてくれたアマリヤやエルカナ、それに、一緒にここまで歩んできたマルコと離れることには一抹の寂しさがある。けれど、ここで寂しいからと言って、人々に救いの導きをするという使命を捨てるわけにはいかないのだ。 「これも、神様のおぼしめしだから」  そうは言うけれども、助祭を任じられるときに司教様から聞いた話をタリエシンは思い出す。本当は、助祭になって隣の教区に行く予定だったのは、アマリヤだったのだ。けれども彼は、修道士になって学ぶことが出来るようになった天文学、それを極めたいと言って、助祭になる事を拒んだのだという。勿論、もっと年上の修道士にも、助祭の話は行っていたようなのだけれども、みな修道院での生活に慣れすぎてしまって、助祭になる事に消極的だったのだという。もっとも、エルカナはその事情を知らないようなので、何故か彼には声が掛かっていなかったようだけれども。  けれど、エルカナに声がかからなかったのは良かったかも知れない。もしエルカナがこの修道院から離れてしまったら、きっとマルコはひどく疵付くだろう。タリエシンはそう思った。だからこそ、自分に助祭の役割が来たのは、神様のおぼしめしなのだ。  修道士としての経験も浅い自分が、しっかりと助祭の仕事を務められるかと言う事に、勿論不安はある。けれども、不安がってばかりではいられないのもわかる。  マルコはまだ、寂しそうな顔をしている。     
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