*第九話:熱帯夜【side Tetsu】

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 その口を、突然激しいキスで塞がれた。  アオバは俺の肩を掴み、上から覆いかぶさってくる。  一瞬、無理やり犯されるんじゃないかという、恐怖に心臓が跳ねた。  反射的に、脚の間をぎゅっと閉じた。  しかしそこを乱暴にこじ開けられることは無かった。  アオバは俺の太ももの上にのしかかり、再び二人の熱を重ねて、両手で扱き上げた。  その動作の激しさと余裕の無さに、(うめ)くように悶えながら、アオバの顔を見上げた。  俺に覆いかぶさってくるアオバの目は、まるで猛獣みたいな光を放っていた。  その目に射抜かれた瞬間、下半身に一気に快感が集まり、背中がぞくぞくと粟立(あわだ)ち、反り返った。  本当は、その熱くそそり立った凶暴な肉を、俺の中に突き刺したいと思っているに違いない。  アオバの目は、いつもの温厚な好青年のそれではなかった。濃厚な雄の本能を宿した、獣の目だ。  俺だって雄だ。だけど俺は猛獣にはなれないんだと、直感で理解した。  怖かった。  俺は牙を立てられる側なんだ。ねじ伏せられて、服従させられる側なんだ。食い殺されるんだ。そう思った。  そしたらどういうわけか、俺はとんでもなく――感じていた。
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