483人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
* * *
ことが終わって、もう一度軽くシャワーを浴びてから、寝室に戻った。
ぐったりと横たわる俺にくっついて、アオバは幸せそうに目を閉じている。
「アオバ、暑い」
「暑いね」
「……ちょっと離れねえ?」
「てっちゃん、エッチの後のいちゃいちゃタイムを大事にしない奴は、モテないんだぞう」
アオバはヘラヘラと笑って、ぎゅっとしがみついてくる。
「いや……別に、いちゃつきたくないってワケじゃ……ないけど」
俺は照れくさくて、口ごもりながら額に滲む汗を拭い、それからアオバの頭をワシワシと乱雑に撫でた。
なんだかアオバと比べると、俺は今まで、ものすごく性に淡泊だったんだと痛感する。
溜息をついて、天井を仰いだ。
「……明日の予定、どうする?」
明日は土曜日だ。休日をどんな風に過ごそうか。
「走ろう。バイク乗ろう」
アオバは俺にしがみついたまま即答した。
いつも通りのコースだ。ふっと笑ってアオバの方を見る。
「そだな。どこ行こうか?」
「うーん……」
アオバは少し考えるように唸ってから
「どこでもいいよ。てっちゃんと一緒なら」
と、そう言って、本当に心から幸せそうに笑った。
その笑顔を見ながら『ああ、俺は今、本当にアオバに食い殺されているんだな』とぼんやりと思った。
アオバとの関係が深まるにつれて、今までの自分が少しずつその牙で噛み砕かれて、そして別の何かに生まれ変わっていくような気がしてる。
その度に俺は、不思議な開放感に包まれているんだ。
このままアオバと最後までしてしまったら、俺はいったいどうなってしまうんだろう。
恐ろしい気持ちと、それから誘惑に導かれそうになる気持ちと、両方ある。
今はまだ、恐怖の方が大きい。
だけどその思考とは裏腹に、身体はじんじんと疼くように、アオバの牙を待ち望んでいるような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!