*第九話:熱帯夜【side Tetsu】

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 * * *  ことが終わって、もう一度軽くシャワーを浴びてから、寝室に戻った。  ぐったりと横たわる俺にくっついて、アオバは幸せそうに目を閉じている。 「アオバ、暑い」 「暑いね」 「……ちょっと離れねえ?」 「てっちゃん、エッチの後のいちゃいちゃタイムを大事にしない奴は、モテないんだぞう」  アオバはヘラヘラと笑って、ぎゅっとしがみついてくる。 「いや……別に、いちゃつきたくないってワケじゃ……ないけど」  俺は照れくさくて、口ごもりながら額に滲む汗を拭い、それからアオバの頭をワシワシと乱雑に撫でた。  なんだかアオバと比べると、俺は今まで、ものすごく性に淡泊だったんだと痛感する。  溜息をついて、天井を仰いだ。 「……明日の予定、どうする?」  明日は土曜日だ。休日をどんな風に過ごそうか。 「走ろう。バイク乗ろう」  アオバは俺にしがみついたまま即答した。  いつも通りのコースだ。ふっと笑ってアオバの方を見る。 「そだな。どこ行こうか?」 「うーん……」  アオバは少し考えるように唸ってから 「どこでもいいよ。てっちゃんと一緒なら」  と、そう言って、本当に心から幸せそうに笑った。  その笑顔を見ながら『ああ、俺は今、本当にアオバに食い殺されているんだな』とぼんやりと思った。  アオバとの関係が深まるにつれて、今までの自分が少しずつその牙で噛み砕かれて、そして別の何かに生まれ変わっていくような気がしてる。  その度に俺は、不思議な開放感に包まれているんだ。  このままアオバと最後までしてしまったら、俺はいったいどうなってしまうんだろう。  恐ろしい気持ちと、それから誘惑に導かれそうになる気持ちと、両方ある。  今はまだ、恐怖の方が大きい。  だけどその思考とは裏腹に、身体はじんじんと疼くように、アオバの牙を待ち望んでいるような気がした。
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