第十話:友情の種と愛の花【side Aoba】

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 卒なく仕事を終え、迎えた週末の夜。  同僚からの飲みの誘いはさりげなく断った。影で「最近付き合いが悪い」と噂されているかも知れない。  でも、いいんだ。今のオレには、もっと大切にしたい時間があるんだ。  てっちゃんからの連絡はまだ無い。  でもいつもの感じだと、そろそろ来る頃合いだ。  オレはてっちゃんに、今帰宅中だとメッセージを送り、スマホを鞄に仕舞った。  そして駅から自宅への道のりを、軽快な足取りで歩いていた――その時だった。 「田中ぁーッ!」  オレは目をキュッと細めた。  大通り沿いに続く歩道のずっと先の方で、誰かが大声で叫んでいるような気がする。  と、点のような状態だった何かが、あっという間にオレとの距離を縮めて、火花が飛び散らんばかりの激しいブレーキと共に目の前で停止した。  前方から猛ダッシュで自転車を漕いでやってきたのは、花月(かづき)さんだった。この人、どんな視力と脚力してんだろう。  オレはわざとらしく、身構えるようなポーズを取ってみせた。 「また出たなッ」 「おう、また出たぞ!」  花月さんは肩で息をしながら、額の汗を指で拭って笑った。
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