第十話:友情の種と愛の花【side Aoba】

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 人工の砂浜を歩きながら、海を眺める。  水面に夜景が揺れている。波間を、屋形船が走り抜ける。どこもかしこもキラキラと輝いている。 「ここから見える窓の明かりの一つ一つに、誰かの生活が存在してるなんて、不思議だね」 「うん。こう見ると、東京は人間の数が多すぎるな。土地も狭すぎるから、ちょっと減らした方がいい」 「オレ達もその中の一人なのに……」  てっちゃんの言い草に、笑ってしまった。  心地の良い、波の音。  足を止めて、二人で並んだ。 「アオバってさ、時々俺のこと、じっと見てるよね」 「……そう?」 「さっきだって――」  言いかけて、てっちゃんは口の中で「うわっ」と小さく叫んだ。  なんだろう? ――その視線を追う。  オレの右隣に立つてっちゃんの、そのさらに向こう側で、一組のカップルが身を寄せ合っている。  男は女の子をぎゅっと抱きしめ、女の子の方も男にすがりついて、波打ち際で凄まじくディープなキスを交わしていた。  近くに人がいるのに、構わずキスするなんて、相当盛り上がってる。さては付き合いたてホヤホヤだな?  てっちゃんは慌てたように、砂浜に視線を落とした。  結構お硬いところがあるから、こういうの、苦手なんだろうなあ。  しかしそのキスがあまりに熱烈すぎて、ちょっと微笑ましいくらいの気分だったオレですら、だんだん恥ずかしくなってきた。  花月さんに、てっちゃんとのディープキスを見せつけてしまったことを、なんだか今になって申し訳なく思い始めた。 「……で、何の話してたんだっけ?」 「えーと」 「ああ、そうだ、アオバが俺のこと凝視する件ね」  てっちゃんはポンと拳で手のひらを叩き、オレを指差してくる。  オレは照れ臭さから、その指を掴んで「人を指差しません!」と言って下に向けた。
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