第十話:友情の種と愛の花【side Aoba】

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「アオバは俺のこと、いつからそんな風に見てたんだよ?」 「いつからって……うーん」 「前の会社で声掛けてくれた時、もうすでに俺のこと狙ってたわけ?」 「どうだろ。狙ってたのかな。まあルックスは、好みのタイプだなあと思ってたけど」  オレは苦笑いしながら、続けた。 「でも最初は単純に、てっちゃんに興味があって、仲良くなりたかっただけだよ」 「ふーん……」 「いつからこんなに好きになっちゃったのかは、覚えてない」 「……」 「でも、恋ってそんなもんでしょ。いつの間にか始まってるっていうか。明確なきっかけとか、理由とか、そんなに必要?」  てっちゃんは頬を掻いて、海を見つめた。 「俺、そういうの、よくわかんねえ」 「はは」 「……でも俺、こう……鈍くて、アオバの気持ちとか、ずっと何も気付いてやれなくて……ごめんな」  てっちゃんの優しさに触れて、目が潤みそうになる。胸が苦しい。  それでもオレは、必死に笑顔を作った。 「……いいよ。そんなの。男同士なのに気付けって言う方が無理あるって……」 「ううん。……俺、今はアオバのこと、もっと解りたいって思ってるよ」 「……うん」  じっと見つめ合った。てっちゃんの目が、波に揺らめく光を反射して、きらきらと輝いている。  ――やばい。抱きしめたい。  こんな美しい夜景を背景に、こんな愛情に満ちたセリフなんか聞かされたら、あとは想いのまま抱き合って、情熱的なキスを交わすしか無いじゃないか!  でも人前で、そんなの駄目だ。  ちくしょう、右隣のカップルはまだちゅっちゅちゅっちゅとフリーダムにキスし続けてやがる。羨ましすぎる。  ぎりぎりと歯を食いしばりながら、やっとの思いで目を逸らし、オレは海の方に顔を向けた。
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