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「アオバは俺のこと、いつからそんな風に見てたんだよ?」
「いつからって……うーん」
「前の会社で声掛けてくれた時、もうすでに俺のこと狙ってたわけ?」
「どうだろ。狙ってたのかな。まあルックスは、好みのタイプだなあと思ってたけど」
オレは苦笑いしながら、続けた。
「でも最初は単純に、てっちゃんに興味があって、仲良くなりたかっただけだよ」
「ふーん……」
「いつからこんなに好きになっちゃったのかは、覚えてない」
「……」
「でも、恋ってそんなもんでしょ。いつの間にか始まってるっていうか。明確なきっかけとか、理由とか、そんなに必要?」
てっちゃんは頬を掻いて、海を見つめた。
「俺、そういうの、よくわかんねえ」
「はは」
「……でも俺、こう……鈍くて、アオバの気持ちとか、ずっと何も気付いてやれなくて……ごめんな」
てっちゃんの優しさに触れて、目が潤みそうになる。胸が苦しい。
それでもオレは、必死に笑顔を作った。
「……いいよ。そんなの。男同士なのに気付けって言う方が無理あるって……」
「ううん。……俺、今はアオバのこと、もっと解りたいって思ってるよ」
「……うん」
じっと見つめ合った。てっちゃんの目が、波に揺らめく光を反射して、きらきらと輝いている。
――やばい。抱きしめたい。
こんな美しい夜景を背景に、こんな愛情に満ちたセリフなんか聞かされたら、あとは想いのまま抱き合って、情熱的なキスを交わすしか無いじゃないか!
でも人前で、そんなの駄目だ。
ちくしょう、右隣のカップルはまだちゅっちゅちゅっちゅとフリーダムにキスし続けてやがる。羨ましすぎる。
ぎりぎりと歯を食いしばりながら、やっとの思いで目を逸らし、オレは海の方に顔を向けた。
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