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――家族。
そう言われた時、俺はふと考えた。
男同士でこんな風に付き合ってることを知ったら、俺の家族はどう思うんだろうか?
俺はアオバの良いところをたくさん知っている。だからいい。だけど、家族はアオバの事を何も知らないんだ。きっと動揺するに違いない。
実家があるのは、周囲に親戚も多く住む、小さな田舎町だ。
ただでさえ地元に帰りたがらない長男が、そこで一体どんな目で見られるだろう。そして母ちゃんや妹は、周りから一体どんな事を言われるんだろうか。
アオバと見つめ合ったまま、考え込んでしまった。
だんだんと曇っていく俺の表情を見て、何かを察したんだろう。アオバは困ったように笑って、俺の肩をポンと叩いた。
「てっちゃーん、そんなに真剣に悩まないでよ」
「えっ、いや……」
「困らせちゃった? 別に無理に押しかけたいわけじゃないから、気にしないで」
俺は動揺しながらアオバに近寄って、Tシャツの袖を掴んだ。
「違うんだよ。アオバに家に来てほしくないとかじゃなくて――」
また黙りこんで、乾いた唇を舐める。
アオバはきょとんとした顔で、Tシャツを掴んでいる俺の手をそっと取った。
「どうしたの?」
「……俺達の関係のこと」
「うん」
「この先、周りや家族にどう説明したらいいんだろうって考えたらさ……」
アオバは目をぱちくりさせて、それから少し俯いた。
川のせせらぎと鳥の声だけが周囲に響き渡っている。
俯いた視線の先で、アオバはもじもじと俺の指先を撫でた。そして、また困ったように眉尻を下げて微笑んだ。
「説明する必要に迫られなければ、説明しなくても良いんじゃないかな」
「……でも、もし知ったら、皆どんな反応すると思う?」
「それは……」
「俺達が仲良くしてるだけで、この先誰かに嫌な思いさせたり、困惑させたり、気を使わせたり、迷惑かけるかも知れないのか?」
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