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俺は考え込むように、まるで独り言みたいに呟いた。
アオバは俺の手を離し、目を反らしながら
「……わからない」
と呟き、それから
「もし周りが何か言ったら、てっちゃんどうする? 今までのこと、無かったことにすんの?」
と、ぽつりと言った。
俺はハッとなって顔を上げた。
アオバの前でこんなに動揺してしまったら、俺までアオバとの仲を、否定的に捉えているみたいじゃないか。
大事なのは、周りからの視線や意見よりも、アオバと築き上げてきた絆のはずなのに。
俺はどんな時も、アオバの味方でいたいのに。
アオバを傷つけてしまったような気がして、きゅっと胸が苦しくなる。
俺は慌てて縋るような目で、アオバの顔を覗き込んだ。
「……ごめん、アオバ」
「何謝ってんの? てっちゃんは深く考え過ぎだよ。今はそんなどうなるか分からないことまで、考えたって仕方ないじゃん」
アオバは俺を安心させるように、ぱっと笑顔を作った。笑っているけど、やっぱりその表情は、どこか悲しげに見える。
改めて考えてみると、アオバはこんなにいい男なのに、何故人前で堂々と「俺の男だ」と主張することさえはばかられるのか、理不尽に思えてきた。
そして無性に悲しくなった。
俺達の関係はこんなに悲しいものだったんだろうか?
もっと穏やかで、心安らぐものだったはずなのに。
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