第一話:失恋記念日【side Tetsu】

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 側にアオバがいて邪魔かどうか? それなら答えはこうだ。 「別にそうでもない」 「本当かね」 「本当さ」  本当に、こいつは俺にとって少し特別な存在かもしれない。うまく言えないけど、他の誰とも違って心地いいと感じている自分がいる。最初は違う星の人みたいに思っていたけれど――  アオバは嬉しそうに目を細めて、首を傾げて俺の顔を覗き込む。 「オレもねえ、どっちかっていうと一人でいるのが好きなタイプよ」 「……そういう風には見えないけど」 「じゃあどういうタイプに見えんの?」 「仲間集めて河原でバーベキューやるのが好きそう」 「なにそれ?」  プッと吹き出して、アオバは水平線を見つめた。  俺はその鼻筋の通った横顔を、綺麗なシルエットだな、なんて思いながらしげしげと眺めた。  アオバは「まあ、賑やかなのも悪くはないけど」と前置きをしてから、ぽつりぽつりと言った。 「結局人間って、居心地がいいところに落ち着くようにできてるっていうかさ、そういうのあるよね」 「……うん」 「だからオレは一人でいるか、てっちゃんと一緒にいるのがいい」  海の向こうを見つめているその目が、キラキラと輝いているように見える。  俺はちょっと照れくさくなって、膝に顎を乗せて、足先で砂浜を掻いた。 「お前、俺と居て楽しいんだ?」 「楽しいよ」 「俺バーベキュー嫌いだよ? うるさいし、埃っぽいから」 「バーベキューはもういいってば」  アオバは笑って、静かな声で続けた。
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