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日が傾いてからも気温はそこそこ高かった。だから寒さに凍えるほどではなかったけれど、ズボンや下着が濡れたままバイクを走らせたせいで、体温を奪われてしまった。
信号待ちをしながら、ぶるりと震える。
風邪を引きそうだ。
帰り道の途中、俺達はセルフ式ガソリンスタンドで給油し、ついでに休憩所に入った。
自販機の前に立ち、温かいお茶を探す。
しかし季節柄か、そこには青いボタンしか並んでいない。俺は仕方なく、冷たい緑茶のボタンを押した。
冷え切った手で、取り出し口からペットボトルを取る。
「体、冷えちった」
振り返って、空いた方の左手をアオバに差し出した。
アオバはその手を取り、体温を確認するように、ギュッギュッと何度か握った。
それから手の甲に唇を押し当て、俺の耳元に顔を近付けてくる。
「……帰ったら、一緒に暖まろう」
俺は体の芯が熱くなるのを感じながら、黙って頷いた。
「オレ、やっぱり外よかベッドの上でしたいもん」
そうささやいて、アオバは笑った。
周囲を見渡し、人の気配を探る。
夜のガソリンスタンドの休憩所は、静まり返っている。
俺はアオバの手首を掴み、その体を誘った。
鼻先と鼻先が触れた時、ふと視線を天井の方に向けて「あっ」と思った。
――防犯カメラがある。
でもそんなことは、なんだかどうでもよくなってしまっていた。
自販機の影に隠れて、俺はアオバの首に手を回し、目を閉じた。そして温もりを求めるように、暖かく柔らかなキスに没頭した。
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