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嬉しくてニヤけながら、じーっと見つめる。
てっちゃんはキョトンとしていたけれど、時間差を置いて、照れくさそうに目を逸らし、鼻を掻いた。
オレの肩を抱いていた手がさりげなく、ローテーブルの上にある、麦茶の入ったグラスの方に伸びる。その動きを邪魔するように、オレはてっちゃんに飛びついた。
「社長サン、マッサージ、ドウデスカー?」
「は?」
驚くてっちゃんをソファにうつ伏せに倒し、肩や背中を指で押す。
中国式マッサージだか、タイ古式マッサージだか、そんなイメージでカタコトになってみた。もちろん、ただのイメージなので揉み方は適当だ。
「なんだよ、急に……」
と言いつつも、オレの指圧が気持ちいいのか、てっちゃんは大人しくうつ伏せになっている。
「社長サン、最近ドウネ? 無理シテマセンカー?」
「もういいって、その口調は」
てっちゃんは笑って、お尻の上に乗っかっているオレの背中を、踵でツンと蹴る。
オレも笑いながら、肩甲骨周りのコリをグリグリと揉みほぐした。
「で、どうなんすか? 無理してない?」
「痛てて」という叫びと共に、手の下で背中が跳ねた。
だけど『痛気持ちいい』という風に、てっちゃんは眉間にしわを寄せながらも、うっとりと沁み入るように言う。
「大丈夫だよ。仕事はちょっと忙しいけど」
「……オレと一緒にいる時は?」
「え?」
「無理してない?」
そう尋ねると、てっちゃんは心地良さそうに目を閉じたまま
「ん……全然、してないよ。アオバと一緒にいると、俺……落ち着くから」
と呟いた。
その言葉を聞いて、オレは思わずピタッと動きを止めた。
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