*第十二話:最果てで二人【side Aoba】

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 嬉しくてニヤけながら、じーっと見つめる。  てっちゃんはキョトンとしていたけれど、時間差を置いて、照れくさそうに目を逸らし、鼻を掻いた。  オレの肩を抱いていた手がさりげなく、ローテーブルの上にある、麦茶の入ったグラスの方に伸びる。その動きを邪魔するように、オレはてっちゃんに飛びついた。 「社長サン、マッサージ、ドウデスカー?」 「は?」  驚くてっちゃんをソファにうつ伏せに倒し、肩や背中を指で押す。  中国式マッサージだか、タイ古式マッサージだか、そんなイメージでカタコトになってみた。もちろん、ただのイメージなので揉み方は適当だ。 「なんだよ、急に……」  と言いつつも、オレの指圧が気持ちいいのか、てっちゃんは大人しくうつ伏せになっている。 「社長サン、最近ドウネ? 無理シテマセンカー?」 「もういいって、その口調は」  てっちゃんは笑って、お尻の上に乗っかっているオレの背中を、(かかと)でツンと蹴る。  オレも笑いながら、肩甲骨周りのコリをグリグリと揉みほぐした。 「で、どうなんすか? 無理してない?」 「痛てて」という叫びと共に、手の下で背中が跳ねた。  だけど『痛気持ちいい』という風に、てっちゃんは眉間にしわを寄せながらも、うっとりと沁み入るように言う。 「大丈夫だよ。仕事はちょっと忙しいけど」 「……オレと一緒にいる時は?」 「え?」 「無理してない?」  そう尋ねると、てっちゃんは心地良さそうに目を閉じたまま 「ん……全然、してないよ。アオバと一緒にいると、俺……落ち着くから」  と呟いた。  その言葉を聞いて、オレは思わずピタッと動きを止めた。
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