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次の日のツーリングは約束通り、千葉県の内房への旅。
空は曇り空だった。
朝の天気予報では雨は降らないと言っていたけれど、一応雨具をバイクに積んで、東京湾沿いに続く湾岸道路を延々と走った。
目的地に近付くにつれ、白くくすんだ空は、だんだんと濃い灰色になっていった。
少し、嫌な予感がする。
富津岬に到着し、ヘルメットを脱いで空を見上げた。
「もしかして、雨、来そう?」
隣でてっちゃんも空を見上げている。
ポケットからスマホを取り出し、画面を見る。予報は『18時頃から小雨』に変わっていた。
「多分、まだ大丈夫。でも少し急ごうか」
「うん」
岬には、鉄とコンクリートの城のような、巨大な展望台がぽつんと鎮座していた。
足音を響かせながら、展望台の階段を、てっちゃんの後に続いて登っていく。
途中で何度も後ろを振り返った。
眼下には、ずっと先まで続く海岸、そして陸地。犬の散歩をしている人が見える。だけど天気も悪いせいか人の数はまばらで、なんだか寂しい風景だ。
展望台の頂上に辿り着くと、思わず溜息が出た。
「すげー……いい眺め」
隣りでてっちゃんも感嘆している。
柵の側に近づいて、東京湾を一望する。果てしなく続く、暗い色の海、灰色の空――
「あっちが三浦半島?」
てっちゃんが海に向かって指を差す。
「そうだね。天気が良かったら、景色ももっとよく見えたんだろうけど」
そう言って、オレはてっちゃんの肩を抱いた。
展望台の頂上には、オレ達の他には誰もいない。てっちゃんもそれを分かっているからか、何も言わずにオレに身を委ねている。
今日はちょっと潮が高い。
防波堤に打ち付ける波の泡を見下ろしていると、だんだんと海の恐ろしさに身を包まれる。てっちゃんの肩を抱く手にも、無意識に力がこもった。
――なんだか、てっちゃんとこの世に二人きりになったような気分だ。
なんにもない黒い海原を見つめながら、ぼんやりとそう思った。
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