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「帰りのルートはどうする?」
バイクの傍らでグローブをはめながら、てっちゃんに話しかけた。
てっちゃんもヘルメットを被りながら、答える。
「そうだなあ……来た道引き返すだけじゃ味気ないし、街中も少し散策していく? ちょっと行ったところに、ダム湖とかあるみたいだけど――」
てっちゃんはちらりと空を見上げてから、心配そうに続けた。
「なんか変な空だな、今日」
その口調には、「のんびりしていて本当に大丈夫かな?」という不安が含まれているみたいだった。
オレも空を見上げる。
頬に当たる風には、まだ湿った雨の気配は無い。だけど雲の色は相変わらず、淀んだ灰色だ。
「大丈夫だよ、多分。夕方前に東京に到着できるように動けば」
「まあ、そうだよな。降ったとしてもカッパを持ってきてるし、まだそんなに寒い時期でもないしな」
この時、オレは思いもしなかった。
何気なく決めた道の選択が、二人の関係に大きな変化をもたらすことになるなんて。
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