*第十二話:最果てで二人【side Aoba】

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 てっちゃんに渡すつもりでいたペットボトルの蓋を開けて、ゴクゴクと水を飲み、口元を拭う。  気分がクサクサした。  初めて二人でラブホテルに来て、オレはすごくドキドキしているのに、それに比べて、てっちゃんがあまりに呑気なんだもの。  それにこんなところで、てっちゃんの元カノに対する密かなライバル心なんか、思い出させないでくれよ。  子供っぽい考えだとは思いつつも、なんとかして、てっちゃんに対抗したくなった。  だからあえて余裕ぶった顔をして、オレはニヤリと笑ってみせた。 「まあ、かく言うオレも、ラブホは久しぶりだけどね。ざっと半年ぶりくらいかなー」  ……というのは、もちろんハッタリだ。強がって、少し――いや、かなり話を盛った。  てっちゃんはキョトンとして、それから呆れたように笑いだした。 「えー? ホントかよ。それって、風俗とか? だってお前、ずっと彼女いなかったじゃ――」  突然、何かに気付いたように、その口元からフッと笑みが消える。 「…………」  黙って様子を窺っていると、てっちゃんはぱちぱちと何度か瞬きをしてから 「……ああ、そっか。男か……」  と、ものすごく苛立ったような表情で、ぼそっと呟いた。  思わずウッとたじろいだ。  でも、なんだか変な気分だ。少々の罪悪感と、達成感が入り混じったような。  だって、これってつまり、今度はてっちゃんの方がヤキモチを焼いてるってことだろう。  今までは追う側だったのに、一転して追われているようで、妙な嬉しさがある。……ひどいことしてるな、オレ。  てっちゃんはベッドに腰掛けたまま、考え込むように俯いた。 「……半年って、ゴールデンウィークのちょっと前じゃん……俺のこと『ずっと好きだった』とか言っておいて、他でやることはやってんのかよ……まあ、そりゃそうか、溜まるもんはしょうがねえし……」 「えっ? いや……」  てっちゃんは口元で指を組んで、呪文を唱えるようにぶつぶつと呟いている。なんだか、背後にどす黒いオーラが立ち上っているような気がする。
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