*第十二話:最果てで二人【side Aoba】

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 思わず後ずさりしてしまった。  いやいや、違うんだ。ちょっと張り合ってみたかっただけなんだ。  ヤキモチ焼いてくれて嬉しーとか、余裕ぶってる場合じゃないな、コレ。かなり不機嫌そうだ。ヤバいかも……。  てっちゃんは靴を床に脱ぎ捨てた。  それからシーツの上を這って、オレに背を向ける角度で、ドスンとベッドの縁に腰掛け直す。  沈黙――そして、深い溜息が聞こえる。  ベッドボードのリモコンに手が伸びて、部屋の隅にあるテレビのモニターが、ぱっと光った。  油切れのロボットのように、ぎこちなく首を回し、オレもテレビ画面に目を向けた。  チャンネルが無造作に切り替わる。  相撲中継、教育テレビ、ニュース、バラエティ――普通の番組しか映らない。なんてシケたホテルなんだ。こういう所ならだいたい、AVか何か見られるようになっているモンだろう? いや、この状況でそんなの映っても困るけど。  乱暴に電源を切って、てっちゃんはリモコンを枕元に投げた。 「……お前さあ、実は結構遊んでんだろ?」 「はっ?」 「前から思ってたんだよ。やけに上手いし、慣れすぎてるし」  オレに背中を向けたまま、てっちゃんは抑揚のない声で言う。 「俺とマスの掻き合いしてるだけじゃ退屈だとか、本当は思ってんじゃないの?」  その声には、怒りや悔しさや寂しさ――色んな感情が渦巻いているように感じた。  オレは焦りながら、必死にいつもの調子を装った。 「やめようよ。何でこんな話になってんの?」  ……あ、オレが挑発したせいか。  そうは思いつつも、自分の事を棚に上げて、オレの過去に腹を立てているてっちゃんのことを、理不尽だと責めたい気持ちも湧いてくる。
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