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「まさか物足りないからって、俺以外の奴と、まだ遊んでんじゃないだろうな?」
――カチンと来た。
オレはてっちゃんの背中を睨みつけて、だけど何故か、口元には薄っすらと笑みを浮かべていた。
「……なに、それ。ヤキモチ焼いてんの?」
そう言った瞬間、鬼のような目がギロッとこちらを振り返った。
てっちゃんがベッドの上を飛び越えて、オレに襲いかかってくる。そのあまりにも俊敏な動きに、オレは圧倒されそうになった。
胸ぐらを掴まれかけて、思わずベッドの上に突き飛ばした。
てっちゃんはキレイなフォームで受け身を取ると、すぐさま立ち上がり、またオレに向かって突進してくる。
猪突猛進とは、このことだ。
てっちゃんはオレの腕を掴み、ぐっと体勢を低くして――あとは一瞬のことだった。
ぶわっとオレの体が宙に浮いた。
スローモーションのように視界がぐるりと回転する。
そして鈍い衝撃と共に、オレの背中はベッドに沈んだ。
見事な一本背負い。
ベッドの底が抜けるかと思った。
たわんだスプリングに揺さぶられながら、オレはてっちゃんを指差して叫んだ。
「なッ……てっちゃん、元サッカー部だって言ってたじゃんか! 柔道の経験もあるのかよ?! 汚えぞ!」
「何が汚えんだ馬鹿野郎! お前だってちょっとくらい、体育の授業で習っただろッ!」
オレを指差して怒鳴ると、てっちゃんはまた猪のように突進してきた。
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