*第十二話:最果てで二人【side Aoba】

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 * * *  そこからは、無我夢中の取っ組み合いが続いた。  胸ぐらを掴み合ってみたり、ベッドの上に放り投げたり、投げられたり。  歳の近い男同士のダメなところなんだろうか。遠慮や手加減を忘れるというか、ヒートアップし始めると、歯止めが効かなくなる。  それでもグーで殴り合わないあたりは、社会人としての良識と、お互いのささやかな思いやりだろうか。 「……クソッ! そりゃ()れたくて、ウズウズしてるに決まってんだろ!」  オレは怒鳴りつけながら、てっちゃんの胸ぐらを両手で掴んだ。 「野郎、認めたな!」  てっちゃんもオレの胸ぐらを掴んで、額と額をゴツンと突き合わせて怒鳴り返す。 「触るだけでも十分幸せだって言ってたじゃねえか! やっぱり全部嘘だったんだな?! 最初から俺のケツだけが目当てだったんだな! 格好つけやがって!」 「嘘じゃない! てっちゃんのことを大事にしたいって意味じゃないか! なんでそんな、変な風に(とら)えるんだよッ!」 「やりたいならやれよ! お前のしたいようにすりゃいいだろ、この助平ッ!」 「なんだと、このッ……馬鹿!」 「阿呆!」  じりじりと睨み合い、歯を食いしばる。  胸ぐらを掴み合ったまま、てっちゃんをベッドに押し倒して、頭を押さえつけた。  そして噛み付くようにキスをする。  てっちゃんは激しく抵抗してもがいたけど、オレはその体を離さなかった。  ぷはっと唇を離して、息継ぎをした。 「てっちゃん、オレはね……!」  悔しそうに見上げてくるてっちゃんを睨みつけて、オレは言い放った。 「オレはてっちゃんが『挿れて欲しい』って言うまで、てっちゃんのケツは掘らないって決めてんだよ!」  目を見開いて、てっちゃんの動きが固まる。 「そりゃ抱きたいよ? めちゃくちゃにしてやりてえよ、このエロいケツをよお!」  勢い任せに、てっちゃんの横尻を引っ叩いて、鷲掴みにした。  てっちゃんがビクリと震える。 「だけど、オレの気持ちばっかり押し付けてたってしょうがないだろ! 人間関係ってそういうモンじゃないだろ! 恋愛ってそういうモンじゃないだろ! ええッ?!」
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