*第十二話:最果てで二人【side Aoba】

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 長いキスを終えて、見つめ合った。  てっちゃんはオレの頬を撫でて、掠れた声で言った。 「俺だってさ……」 「うん?」 「いつかは覚悟決めなきゃって、考えてはいたんだよ。何度も」 「覚悟って――」  そう言いかけた途端、ぐるんと視界が反転した。  気が付いたら、今度はオレの方がベッドに押し倒されていた。  てっちゃんはオレの上にのしかかったまま、這うように後退して、股間に顔を押し付けてくる。  目を白黒させて、その様子を見下ろした。  ズボンの上から、汗と雨の湿気で蒸れたそこを唇でなぞられ、背筋がぞくぞくする。 「てっちゃん、駄目だよ。シャワーも浴びてないのに」  オレはできるだけ平常心を保ちながら、子供のいたずらを咎めるように言った。  だけど、てっちゃんは熱っぽい目でオレを見上げて、 「……俺、お前の雄臭え匂い嗅ぐと、興奮する」  と言いながら、すりすりと猫のようにそこに頬ずりし続ける。 「こんなの、ちょっと前までの俺だったら、考えられねえよ。俺の頭も身体も、一体どうなっちゃったんだよ」 「……」 「お前のせいで俺、こうなったんだぞ……どうしてくれるんだよ」 「……うん」  いや「うん」ってなんだよと自分にツッコミを入れつつ、てっちゃんの色気にオレは圧倒されていた。 「アオバ」 「は、はい」  てっちゃんは体の上をよじ登るように這ってきて、オレの顔を覗き込んだ。 「抱いてくれよ」 「……」 「俺も、お前が欲しい。挿れて欲しい……俺、大丈夫だから」  オレはぼーっと、てっちゃんのその切羽詰まったような顔を見上げていた。 「……なあ、聞いてる?」  そう言われて、慌ててコクコクと、何度も頷いた。 「ほ、本当に……いいの?」  肩を掴んで揺さぶると、てっちゃんは頬を真っ赤に染めて、 「お、男に二言は無い!」  と言い切った。  その表情が可愛くて、目の前の体をぎゅっと抱きしめた。  そのままベッドの上を、ごろんと転がる。  頬ずりをしながら首筋に顔を埋めて、てっちゃんの匂いを嗅いだ。  暖かく、脳天が痺れるような、オレにとってはこの世で一番官能的な匂い。本当は、このまま勢いにまかせてしたいくらいだ。  散々迷ってから、オレは顔を上げて、キリッと表情を引き締めた。 「じゃ、じゃあ……シャワー、しようか」 「うん……」
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