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* * *
汗ばんだ体を抱き合って、肌を撫でる。
てっちゃんはオレの肩にもたれ掛かって、うっとりと目を閉じて言った。
「昔な――」
「うん」
「高校生の頃、学校の近くに団子屋があったんだ。作りたての温かい団子に、みたらしをかけてくれんの」
ぽつりぽつりと、気怠く心地よい掠れ声が続く。
「部活の帰りに、俺、よくこっそり買い食いしてたんだ――ヤッてる最中に、なんとなく、そんな思い出が甦ったよ」
そう言って、てっちゃんは串を持つようなジェスチャーをしながら、プッと吹き出した。
「竹串でプスッと串刺しにされた団子……」
くつくつと肩を震わせるてっちゃんの隣で、オレもふふっと吹き出す。
「オレ、てっちゃんのこと串刺しにしちゃった……」
二人して、なぜか笑いが止まらなくなった。
オレは目を閉じて、頬の日焼けした学生服姿のてっちゃんを、ぼんやりと思い浮かべた。
今、オレの腕の中にいる人は、かつては『放課後に串団子をぱくついている上条君』だったんだなあ。
そう思うとより一層、てっちゃんのことが愛おしくてたまらなくなった。
「オレ、本当にてっちゃんを大切にするつもりだったんだよ。何年でも、一生でも待つ気でいたのに」
「一生って……まあ、約5ヶ月も我慢してたんだから、アオバにしては上出来だったんじゃないの?」
「オレにしてはって、なんだよ、人をエロ猿みたいに」
わざとらしく口を尖らせてみせる。
てっちゃんは笑って、
「……っていうか、我慢させて悪かったよ」
と、気恥ずかしそうにオレの頬にキスをした。
オレはてっちゃんの唇に、ちゅっとキスをし返して、額と額を擦り合わせた。
「初めては、オレの部屋か、てっちゃんの部屋ですればよかったね」
「うん?」
「そしたら、このままゆっくり眠れたのに」
「俺はこのまま宿泊したっていいよ。明日日曜日だし」
「うーん。それでもいいけどさあ――」
少し渋ってから、オレはてっちゃんの耳元でささやいた。
「やっぱり、帰ろ。家のベッドの方が落ち着くから」
甘えるように額を擦り付けると、てっちゃんはワシワシとオレの頭を撫でてくれた。
温もりを抱き締め、うっとりと目を閉じる。
まぶたの裏でまた、学生服姿のてっちゃんが、オレに向かって笑顔で手を振った。
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