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朝日が昇りきってからも、俺達は飽きもせず、何時間も浜辺の片隅に肩を並べて語り合っていた。
初日の出を見るために集まっていた人達も次第に引き上げていき、周囲の人影はまばらになりつつある。
「そろそろお腹が空いてきたね」
アオバが立ち上がり、尻に付いた砂を払いながら言った。
「どっかで食べる?」
「俺は手軽にコンビニ飯とかでもいいよ。せっかくだから、あちこち走りたいし」
そう答えると、アオバは少し考えるような仕草をしてから、ポケットからスマホを取り出した。
近くの飯屋かコンビニでも探しているんだろうか。アオバは画面をささっと操作して、スマホをまたポケットに仕舞った。
「実はオレ、寄りたい所があるんだよね。てっちゃん、付き合ってくれる? ご飯もそこで食べよう」
「いいよ。どこ?」
「オレの実家」
アオバはニヤリと笑って、駐車場の方へと歩きだす。
「……えっ?!」
ワンテンポ遅れて、俺も立ち上がる。
「ちょっ、ちょっと待てよオイ! どういうこと?!」
そういやこいつの実家、千葉だって言ってたっけ。
アオバは俺から逃げるように、小走りで浜辺に足跡をつけていく。その足取りは、完全に悪戯小僧のそれだった。
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