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* * *
「なあオイ、実家って、俺も行くのかよ?」
「当たり前じゃん」
インカムで抗議しながら、バイクでアオバを追走する。
「元旦だぞ?! なんのアポもなしに正月早々、人ん家にお邪魔できるわけ無いだろ!」
「さっきお袋に『今から友達連れて行く』ってメールしておいたし」
「さっきって……!」
赤信号だ。
停止線の手前でアオバの横に並び、ヘルメットのシールドを上げる。
アオバもシールドを上げて、俺を見た。
「大丈夫だよ。オレの親父もお袋も、『友達ができたらいつでも家に連れて来なさい』って、いつも言ってたもん」
「そりゃアレだろ……小学生の時の話とかだろ、絶対!」
「いいから、いいから」
青信号になり、アオバはさっさと発進してしまう。
125ccの俺のバイクはパワーが無いから、発進時はどうしてもアオバに遅れを取ってしまうんだ。
それでも必死になってアクセルを開け、凄まじい勢いでシフトアップを繰り返し、その背を追った。
「アオバ、駄目だって! 絶対失礼になるって!」
「大丈夫だってば!」
「待て、アオバ! おーい!」
わーわーと騒ぎながら、道路を駆け抜ける。
そのうちアオバにインカムを切られて、俺はもう完全にお手上げ状態で走り続けるしか無かった。
ドキドキしていた。
初めましての時は、なんて挨拶すればいいんだっけ?
初めまして……上条と申します、明けましておめでとうございます、正月早々おじゃまします、怪しい者ではございません――
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