最終話:夢の裏側【side Tetsu】

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 * * *  玄関を上がってすぐのところに、大きなショーケースが置かれていた。  中にはトロフィーやメダルがいくつも飾ってあり、そのほとんどに馬の模様が入っている。  確か前に、両親が夫婦揃って乗馬をやるんだって、アオバが言ってたっけ。  顔を近づけて中をしげしげと眺めていると、指紋一つ無いガラスが吐息で白く曇った。 「てっちゃん、こっちこっち」  アオバに手招きされ、リビングに入る。  キレイに片付けられた部屋の壁や棚のあちこちに、家族写真が飾られている。まるで映画で見る、アメリカの家みたいな雰囲気だ。  キョロキョロと周囲を見渡していると、棚の上の一番目立つ場所に飾られている写真立てに、目が止まった。  写真の中で、三人の青年が肩を組んで笑っている。  その一番右端は、アオバだ。  少し雰囲気が若い。紺色のブレザーを着ているところから察するに、多分高校生の頃の写真なんだろう。 「それ、兄弟の写真。上に二人、兄貴がいるんだ。よく似てるでしょ?」 「うん、似てる」 「一番上は千葉市で一人暮らし。二番目は転勤族で、今は三重県にいるんだ」  隣に並ぶ二人も、アオバによく似たタイプの美男だ。  写真の上に黒いインクで『駿馬』『良馬』『青馬』と書かれている。 「兄ちゃん達は『しゅんま』と『りょうま』?」 「そう。ばあちゃんが来た時によく名前を間違えられるから、そうやって写真に名前書いてあんの」  アオバはクスクスと笑いながら、俺と一緒になって写真立てを覗き込む。 「なるほどね。じいちゃんは間違えないの?」 「じいちゃんは5年くらい前に、天国に行ったよ」
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