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玄関を上がってすぐのところに、大きなショーケースが置かれていた。
中にはトロフィーやメダルがいくつも飾ってあり、そのほとんどに馬の模様が入っている。
確か前に、両親が夫婦揃って乗馬をやるんだって、アオバが言ってたっけ。
顔を近づけて中をしげしげと眺めていると、指紋一つ無いガラスが吐息で白く曇った。
「てっちゃん、こっちこっち」
アオバに手招きされ、リビングに入る。
キレイに片付けられた部屋の壁や棚のあちこちに、家族写真が飾られている。まるで映画で見る、アメリカの家みたいな雰囲気だ。
キョロキョロと周囲を見渡していると、棚の上の一番目立つ場所に飾られている写真立てに、目が止まった。
写真の中で、三人の青年が肩を組んで笑っている。
その一番右端は、アオバだ。
少し雰囲気が若い。紺色のブレザーを着ているところから察するに、多分高校生の頃の写真なんだろう。
「それ、兄弟の写真。上に二人、兄貴がいるんだ。よく似てるでしょ?」
「うん、似てる」
「一番上は千葉市で一人暮らし。二番目は転勤族で、今は三重県にいるんだ」
隣に並ぶ二人も、アオバによく似たタイプの美男だ。
写真の上に黒いインクで『駿馬』『良馬』『青馬』と書かれている。
「兄ちゃん達は『しゅんま』と『りょうま』?」
「そう。ばあちゃんが来た時によく名前を間違えられるから、そうやって写真に名前書いてあんの」
アオバはクスクスと笑いながら、俺と一緒になって写真立てを覗き込む。
「なるほどね。じいちゃんは間違えないの?」
「じいちゃんは5年くらい前に、天国に行ったよ」
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