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その後も俺達は、時間も忘れて堤防の上に佇んでいた。
ふと視線を上げると、空にぽつんと白い月が浮かんでいるのが見えて、「楽しい一日が終わるのはあっという間だなあ」なんて、しみじみと思った。
そんな風に思えるのは、やっぱりアオバが隣にいてくれるからに違いない。
信号が青になる。
都会の明るい夜空の下を、シフトアップを繰り返しながら走り出す。
アオバがいつものように歌を口ずさみ、口笛を吹く。
「♪オレとお前は、羽織の帯よ 堅く結んで解けやせぬ、解けやせぬ――」
その心地よいメロディーに耳を傾けながら、俺は思う。
この先もきっと、俺はアオバと一緒に走り続けるんだろう。
朝日を見つめ、夕日を眺め、月を見上げ、春の桜吹雪になり、夏の潮風になり、秋の涼風になり、冬の北風になって。
そしていつか風が止む時が来たとしても、俺はずっとアオバの隣りにいたい。
バイクで駆け抜けたたくさんの思い出と共に、アオバと肩を並べて歩んでいけたらいい。
そんな事を考えながら、次の交差点の信号も、青で通過する。
まっすぐに伸びる道の先を見渡すと、街灯の明かりと小さな青いランプがずらりと並んでいた。俺達を導く道標のように、どこまでも、どこまでも。
シールドの下でそっと微笑んで、俺はアオバと二人、都会の夜の風になった。
〈了〉
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