最終話:夢の裏側【side Tetsu】

14/15

483人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 その後も俺達は、時間も忘れて堤防の上に佇んでいた。  ふと視線を上げると、空にぽつんと白い月が浮かんでいるのが見えて、「楽しい一日が終わるのはあっという間だなあ」なんて、しみじみと思った。  そんな風に思えるのは、やっぱりアオバが隣にいてくれるからに違いない。  信号が青になる。  都会の明るい夜空の下を、シフトアップを繰り返しながら走り出す。  アオバがいつものように歌を口ずさみ、口笛を吹く。 「♪オレとお前は、羽織の帯よ 堅く結んで解けやせぬ、解けやせぬ――」  その心地よいメロディーに耳を傾けながら、俺は思う。  この先もきっと、俺はアオバと一緒に走り続けるんだろう。  朝日を見つめ、夕日を眺め、月を見上げ、春の桜吹雪になり、夏の潮風になり、秋の涼風になり、冬の北風になって。  そしていつか風が止む時が来たとしても、俺はずっとアオバの隣りにいたい。  バイクで駆け抜けたたくさんの思い出と共に、アオバと肩を並べて歩んでいけたらいい。  そんな事を考えながら、次の交差点の信号も、青で通過する。  まっすぐに伸びる道の先を見渡すと、街灯の明かりと小さな青いランプがずらりと並んでいた。俺達を導く道標のように、どこまでも、どこまでも。  シールドの下でそっと微笑んで、俺はアオバと二人、都会の夜の風になった。  〈了〉
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

483人が本棚に入れています
本棚に追加