第五話:はじまりの旅【side Tetsu】

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 風は緩やかに流れている。  青い空に、ほんの少しの白い雲。  ゴールデンウィークが始まってから連日、いい天気が続いている。寒くもなく暑くもなく、5月はツーリングにはもってこいの季節だ。  俺はバイクにまたがり、朝早くに家を出た。  今日はついに、アオバとの小旅行の出発の日なんだ。 「燃料よし! タイヤの空気圧よし!」 「おっ、指さし確認。さすが」  ガソリンスタンドで給油を済ませて、びしっとバイクに指差す。  備え付けのウエスでバイクのボディを拭きながら、アオバが笑った。 「アオバもやれよ」 「エンジンオイルよし! チェーンの張り、よし!」 「よし!」  俺は最後に、アオバの事を指差してやった。そしたらアオバも俺を指差して、 「……よし!」  と真剣な表情で言う。お互いを指さし合ったまま、プッと吹き出してしまった。  何が面白いのか自分でもよくわからないけど、アオバとふざけあっていると、こんなどうでもいいことでも無性に笑えてくるんだ。 「そういえばアオバ、今日はちゃんとしたライディングジャケット着てるじゃん。めずらしい」 「へへへ」 「ちゃんとプロテクターが入ってる」  アオバの脇腹や胸、背中を触ると、硬い感触がした。薄型で見た目はゴツくないけど、しっかりしたジャケットみたいだ。  ボディチェックを続けていたら、アオバは照れたような顔でくねくねと体をよじった。 「てっちゃーん、あんま触んないでよエッチ」 「ばか」  アオバの頭をペちんと叩いて、バイクにまたがる。  アオバもバイクにまたがって、ずれたヘルメットの位置を直しながら言った。 「んじゃ、行きますか」 「はーい」  発進。  軽快なエンジン音と共に、俺達の二泊三日の旅が始まった。
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