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風は緩やかに流れている。
青い空に、ほんの少しの白い雲。
ゴールデンウィークが始まってから連日、いい天気が続いている。寒くもなく暑くもなく、5月はツーリングにはもってこいの季節だ。
俺はバイクにまたがり、朝早くに家を出た。
今日はついに、アオバとの小旅行の出発の日なんだ。
「燃料よし! タイヤの空気圧よし!」
「おっ、指さし確認。さすが」
ガソリンスタンドで給油を済ませて、びしっとバイクに指差す。
備え付けのウエスでバイクのボディを拭きながら、アオバが笑った。
「アオバもやれよ」
「エンジンオイルよし! チェーンの張り、よし!」
「よし!」
俺は最後に、アオバの事を指差してやった。そしたらアオバも俺を指差して、
「……よし!」
と真剣な表情で言う。お互いを指さし合ったまま、プッと吹き出してしまった。
何が面白いのか自分でもよくわからないけど、アオバとふざけあっていると、こんなどうでもいいことでも無性に笑えてくるんだ。
「そういえばアオバ、今日はちゃんとしたライディングジャケット着てるじゃん。めずらしい」
「へへへ」
「ちゃんとプロテクターが入ってる」
アオバの脇腹や胸、背中を触ると、硬い感触がした。薄型で見た目はゴツくないけど、しっかりしたジャケットみたいだ。
ボディチェックを続けていたら、アオバは照れたような顔でくねくねと体をよじった。
「てっちゃーん、あんま触んないでよエッチ」
「ばか」
アオバの頭をペちんと叩いて、バイクにまたがる。
アオバもバイクにまたがって、ずれたヘルメットの位置を直しながら言った。
「んじゃ、行きますか」
「はーい」
発進。
軽快なエンジン音と共に、俺達の二泊三日の旅が始まった。
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