第七話:タンデムシート【side Tetsu】

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 窓から差し込む光に目を細める。……朝だ。  俺は目を擦って、布団に包まったまま周りを見回した。  やっぱり今朝もアオバは部屋にいない。昨日みたいに、また朝風呂にでも行ったんだろうか。  ノロノロと体を起こして、隣を見下ろす。  二つ並んだ布団の片方は、敷いた時と一切変わらず、ぴんとシワが伸びた状態だ。それに比べ、俺が収まっている布団は、シーツも毛布もぐちゃぐちゃだった。  昨晩はほとんど裸みたいな格好のまま、アオバの腕に抱かれて眠りに落ちた。  でも今は、シワは寄ってるけど、ちゃんと浴衣を羽織っているし、下着も履いている。  あの出来事は、夢だったんじゃないかと思えてくる。  ぼんやりと考えていると、ドアが開く音がした。  部屋の出入り口と和室を隔てるふすまが開いて、バスタオルを持ったアオバが現れた。 「オハヨ、てっちゃん」 「……おはよう」  アオバはいつものように、穏やかな調子で声をかけてくる。だけど少しだけ、その笑顔はぎこちない。  シーンと空気が静まり返る。  窓の外から、チュンチュンと呑気なスズメの声だけが聞こえる。  挨拶の続きがうまく出てこなかった。少々間が空いてから、俺もアオバにぎこちなく微笑みかけた。 「……朝風呂?」 「うん。てっちゃんも行ってきたら?」  ウン、と頷いて、俺は布団から出た。  浴衣の帯を締め直し、タオル掛けにかけてあったバスタオルを持つ。  アオバとすれ違い、部屋を出ようとしたけど、なんだか顔をうまく見ることができなくて、目を逸らしてしまった。  視界の隅でアオバは、主人に怒られてしょげた柴犬みたいに、シュンとしていた気がする。
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