第七話:タンデムシート【side Tetsu】

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 俺はどうして、アオバとあんなことをしてしまったんだろう。  考えてみると、やっぱりアオバのペースに飲まれたってところが大きい。  ちくしょう。やっぱりあいつ、悪徳営業マンじゃないか。  だけど、アオバの手は大きくて暖かかった。  恐れていたほどの嫌な感じはなくて、むしろ気持ちよかった。というか、よすぎるくらいだった。反応を見ながら的確にポイントを押さえてくる、緩急つけた手の動きに、俺は完全に翻弄されていた。  あいつはきっと、相当なオナニストにちがいない……。  洗い場の前に腰掛けて、体にこびりついた体液をシャワーで流す。  ふと目の前の鏡を見ると、首や胸や腹に赤い痕が散らばっていた。  体をひねって、鏡に背中を向けてみる。よく見えないけど、体のそこら中にキスマークがついているのが分かる。  反射的に、手であちこち隠しながら、周囲をキョロキョロと見渡した。  時間帯のせいか、利用客は少ない。別にわざわざ、他人の体をじろじろと見てくる人だっていない。  考えてみれば、アオバはよく、俺をじっと見つめてくることがあったような気がする。  あれもこれも全部、こういうことだったのか。  昨晩、必死になって俺の身体を求め、むしゃぶりついていたアオバの姿を思い出す。  相当思い詰めていたんだな。俺が鈍いせいで、傷つけたり苦しめたことも、何度もあったんだろう。きっとその度にあいつは、色んな感情を押さえて、なんでもないフリをして、ニコニコと笑っていたんだ。  俺はぼんやりと指先で赤い痕に触れた。  なぜか胸の奥が、キュッと痛くなった。
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