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「くそッ!」
駆け寄り、慌てて車体を引き起こす。
角度はずれてるけど、ミラーは折れていない。しかしクラッチレバーが、湾曲したペルシアの刀のように、ぐにゃりと曲がっている。
レバーに手をかけ、グッグッと握り込む。曲がってはいるけど、機能としてはまだセーフみたいだ。
ホッとしたのも束の間、視線をその下に向けて、思わず目尻が引きつった。
「てっちゃん、大丈夫?!」
アオバもバイクを停めて、駆け寄ってくる。
「駄目だ、シフトペダルが曲がってる。アオバ、直すの手伝ってくれ!」
なんと、シフトペダルが明らかに操作不能な角度で内側にひん曲がっていた。
俺はペダルを両手でつかみ、バイクの車体に足をかけた。車体の反対側からアオバに支えてもらい、「いっせーの」で思いっきり引っ張る。
ギギギ、と曲がったペダルが動く気配がした。
いけるか――と、思った瞬間。『バキッ』という不吉な音と共に、俺は後ろにでんぐり返しをして、勢いよく路肩の草むらにダイブした。
体を起こし、呆然とする。
顔の前で、ゆっくりと手のひらを開いた。手の中には、折れたシフトペダルがあった。
「ふはっ……」
なんだか脱力してしまって、笑いがこみ上げてきた。
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