第七話:タンデムシート【side Tetsu】

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 * * *  道路の混雑ぶりがひどく、予想よりはるかに長い時間をかけて、東京まで戻ってきた。  アオバに家まで送ると言われたけど、遠慮した。  途中で少し交代はしたものの、ほとんどアオバが運転していた。疲れてるだろうとも思ったし、道中の数時間、ほぼ会話が無かったから、この気まずさから1秒でも早く逃れたかったというのもある。  アオバも俺の顔色を伺うようにしていて、無理に意見を通そうとはしなかった。  アオバのマンションの駐輪場で、バイクから降りた。  ヘルメットを脱いで、俺はできるだけ何でもない風に微笑んだ。 「それじゃあな」 「うん」 「お疲れ。今日はよく休めよ」 「……うん」  アオバは寂しげに微笑みかえして、らしくもない弱々しい声で 「てっちゃん、あのさ――」  と、俺を引き止めた。 「考えてたんだ。昨晩から、ずっと」 「……なんだよ」 「オレ、なんて馬鹿なことしちゃったんだろうって」  アオバもヘルメットを脱いで、そっとバイクのシートの上に置いた。  そして硬い表情で、髪の毛がぺちゃんこになった頭を下げてくる。 「自分の気持ちばっかり押し付けて、酷いことしてごめん」 「……」 「友情を裏切ってごめん」 「……」 「せっかくの旅の思い出を、こんな風にしちゃって……ゴメン」  その声は少し、震えていた。  俺は言葉が見つからず、俯いて、黙ってそれを聞いていた。 「オレ、もうてっちゃんに迷惑かけないよ」  ――どういうことだ、とアオバの目を見た。 「もう連絡も貰えないと思うけど、それも仕方がないってわかってるよ」 「……」 「本当に、ゴメン」 「……アオバ」 「たださ、オレはてっちゃんのこと好きだけど……大好きだけど、大切な仲間だって、親友だって思ってたよ。それも本当なんだよ」 「おい、アオバ」 「いいんだ!」 「……」 「こんな風に言えば、てっちゃんはきっとオレに優しい事を言ってくれるんだろうけど。というか、これじゃ言わせようとしてるみたいだけど」 「アオバ……聞けよ」 「本当に、もう――」 「聞けって!!」  思わず大声で怒鳴った。  空気がシンと静まり返る。  アオバは頬をこわばらせて、俺を見つめている。
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