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道路の混雑ぶりがひどく、予想よりはるかに長い時間をかけて、東京まで戻ってきた。
アオバに家まで送ると言われたけど、遠慮した。
途中で少し交代はしたものの、ほとんどアオバが運転していた。疲れてるだろうとも思ったし、道中の数時間、ほぼ会話が無かったから、この気まずさから1秒でも早く逃れたかったというのもある。
アオバも俺の顔色を伺うようにしていて、無理に意見を通そうとはしなかった。
アオバのマンションの駐輪場で、バイクから降りた。
ヘルメットを脱いで、俺はできるだけ何でもない風に微笑んだ。
「それじゃあな」
「うん」
「お疲れ。今日はよく休めよ」
「……うん」
アオバは寂しげに微笑みかえして、らしくもない弱々しい声で
「てっちゃん、あのさ――」
と、俺を引き止めた。
「考えてたんだ。昨晩から、ずっと」
「……なんだよ」
「オレ、なんて馬鹿なことしちゃったんだろうって」
アオバもヘルメットを脱いで、そっとバイクのシートの上に置いた。
そして硬い表情で、髪の毛がぺちゃんこになった頭を下げてくる。
「自分の気持ちばっかり押し付けて、酷いことしてごめん」
「……」
「友情を裏切ってごめん」
「……」
「せっかくの旅の思い出を、こんな風にしちゃって……ゴメン」
その声は少し、震えていた。
俺は言葉が見つからず、俯いて、黙ってそれを聞いていた。
「オレ、もうてっちゃんに迷惑かけないよ」
――どういうことだ、とアオバの目を見た。
「もう連絡も貰えないと思うけど、それも仕方がないってわかってるよ」
「……」
「本当に、ゴメン」
「……アオバ」
「たださ、オレはてっちゃんのこと好きだけど……大好きだけど、大切な仲間だって、親友だって思ってたよ。それも本当なんだよ」
「おい、アオバ」
「いいんだ!」
「……」
「こんな風に言えば、てっちゃんはきっとオレに優しい事を言ってくれるんだろうけど。というか、これじゃ言わせようとしてるみたいだけど」
「アオバ……聞けよ」
「本当に、もう――」
「聞けって!!」
思わず大声で怒鳴った。
空気がシンと静まり返る。
アオバは頬をこわばらせて、俺を見つめている。
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