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また一人で勝手に感情を押し付けやがって。俺だってぐるぐるぐるぐる色んな事考えてるのに。
俺の話も聞かずに、こいつは勝手に、もう俺達の関係が終わったつもりでいる。
俺達の仲はこんなことで壊れるような脆いものだったのか。
今まで一緒にいて楽しかったじゃないか。
心地が良いと思いながら、肩を並べてきたじゃないか。
それが俺達の全てじゃないのか。
「好きだ」と告白してしまった瞬間に、その事実さえ消えて無くなるっていうのか。
お前はいい奴だって、俺は何度も言ったじゃないか。
俺はお前のために何かしてやりたいと言ったじゃないか。
愛だと言ったじゃないか。
「頼むから、俺の話を聞いてくれよ……」
俺は懇願するみたいに、声を絞り出した。
だけど、その続きが出てこない。
胸の中で渦巻く感情を、どう言葉にしたらいいのか、なんと伝えればいいのかが分からない。
「…………」
長い沈黙の後、俺は一歩ずつ、吸い寄せられるようにアオバに近付いていった。
ほとんど衝動的な行動だった。
アオバは始めのうちは、硬い表情のまま俺の様子を窺っていた。だけど、俺が足を止める気が無いことが分かったのか、息を呑むようにその目を大きく見開いた。
視線が絡み合い、瞳の距離がゆっくりと縮まる。ピンぼけし始めた視界を、まぶたを閉じてシャットアウトした。
直前で少し戸惑って、軌道がスッと横にそれてしまった。それでも俺は必死の思いで、アオバの唇の端に、自分の唇を押し当てた。
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