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失神しそうなほどビビった。
その声は、歩道の方から聞こえた。
アオバがギロッと目だけ動かして、声のした方を見る。
俺もアオバの服にしがみついたまま、ゆっくりと目を動かし、アオバの視線を追った。
ぼやける視界に、青っぽいジャケットの色と、制帽のシルエットが写った。
――やば、アレ警察官じゃ……
さーっと血の気が失せて、目の前がチカチカしてきた。
「ん?」
声をかけてきたお巡りさんは、目を細め、手のひらで街灯の明かりを遮るようにしてこっちを凝視している。
アオバがゆっくりと唇を離して、歩道の方に顔を向けた。ツーっと唾液が糸を引いて、唇と顎に落ちた。
酸欠気味なのかもしれない。目眩と息苦しさを覚えながら、俺も歩道の方に顔を向けた。
「……えっ?」
ようやく状況を理解したのか、お巡りさんはぎょっと目を見開いた。
傍らの白い自転車が、ガシャンと歩道に倒れる。
俺はすっかり腑抜けてしまって、肩で息をしながらぼんやりとその様子を眺めていた。
アオバはお気に入りのぬいぐるみを取られまいと必死になっている子供みたいに、俺の腰を抱く手に力を込めて、お巡りさんを睨みつけた。
「……なんスか」
いつものアオバらしくない、どすのきいた声だった。
お巡りさんは焦ったように口ごもる。
「い、いや、そんなところで何を」
「ディープキッスですよッ! 見りゃわかんでしょう?!」
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