*第八話:肝心な話はいつでも【side Aoba】

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 * * *  まだゴールデンウィークの真っ最中だけど、次の日オレは出勤日だった。休みの取引先が多いから、会社に行ったところで仕事はあまり無いんだけど。  てっちゃんは有休を取ったと言っていた。  だから早朝、オレは静かにベッドを抜け出して、てっちゃんを起こさずに仕事に行くことにした。  てっちゃんも一度家に帰るだろうとは思ったけど、今はゆっくり眠って、旅の疲れを癒やしてほしかった。  オレのスウェットを着て、静かに寝息を立てているてっちゃんのオデコに、そっとキスをした。  それから、テーブルの上に合鍵を置いて家を出た。『カギはポストの中にでも入れといて』ってメモと一緒に。  それなのに―― 「おかえり」 「……」  仕事から帰ったら、てっちゃんはまだオレの家にいた。  玄関の扉を開けたらすぐそこにいたもんだから、驚いて硬直してしまった。 「おかえりってば」 「あ、うん。ただいま……」 「どしたんだよ、ぼーっとして」  家に帰らなかったのか? と思ったけど、よく見たらてっちゃんは昨日と違う服を着ている。どういうことなんだろう。  それにドアを開けた瞬間に漂ってきた、このお腹が鳴りそうになるような、いい匂いは一体――  スンスンと鼻を鳴らしているオレを見て、てっちゃんは微笑んだ。 「飯作ったんだよ。勝手に台所借りて悪いけど」 「本当? 何作ったの?」 「いや、普通にみそ汁ときんぴらと、ほうれん草の卵とじとカレイの煮付けと……」 「ま、まじかよ」
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