*第八話:肝心な話はいつでも【side Aoba】

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 てっちゃんが指折り羅列したメニューは、オレにとっては久しぶりの、ちゃんとした和風の家庭料理だった。  すごい。思わず目をキラキラさせながら、俺は急いで革靴を脱いだ。 「お腹減ってたんだよぉ、オレ」 「じゃ、早く食べよう。さっさとそのスーツ脱いでさ」  オレは部屋に向かおうとするてっちゃんの腕を、衝動的に掴んだ。そして振り返ったその肩を壁に押し付けて、そっとキスをした。  ちゅっと軽い音を立てて唇を離すと、てっちゃんはぼんやりとした表情でオレの顔を見ていた。  つい調子に乗ってしまった。嫌われるかも――そう思ったら怖くなった。  謝ろうとして口を開きかけた。それとほとんど同じタイミングで、むっと唇が塞がれる。  オレは目を見開いた。目の前にあるものとの距離が近すぎて、寄り目になっていたかもしれない。  てっちゃんの唇が、オレの唇に重なっていた。 「……」 「……」  二人共、見つめ合ったまま黙り込んでしまった。  ドキドキしていた。  こんなの、普通の恋人同士みたいじゃないか。てっちゃんとこんなことをしているなんて、信じられない。 「……飯、食べようよ」  てっちゃんはオレのネクタイの先を、指先でもじもじといじりながら、苦笑いした。  オレは慌てて「ウン」と頷いた。  それからようやく、二人揃ってリビングに向かった。
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