*第八話:肝心な話はいつでも【side Aoba】

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 * * *  空腹も満たされたことだし、後片付けを終えてから、リビングで映画でも見てゆっくりとくつろぐことにした。  昨日も一昨日も何度も触れ合ったんだ。今夜は何もせず、平和的に過ごしたっていい。  テレビ台の棚に、DVDがずらりと並べてあった。オレはそこを指差して、てっちゃんを手招きした。 「てっちゃんの好きなの選んでいいよ」  そう言って、ソファの前のローテーブルの上にお菓子とアイスコーヒーを準備し始める。  てっちゃんが後ろからツンツンと肩をつつく。  振り返ると、差し出されたその手には、田舎で暮らす二人の幼い姉妹が、珍獣のような巨大な森の精霊に出会って不思議な体験をするという、某国民的アニメ映画のパッケージが握られていた。  ソファに深くもたれ掛かって、しばらくはホンワカと癒やされるような気持ちでテレビ画面を眺めていた。  しかしオレはもう、この映画を数十回は見ていて、セリフも全部覚えているくらいなので、飽きてるといえば飽きてるのだ。  ちらりと視線を横に向ける。  となりのてっちゃんは、やけに真剣な顔で、食い入るようにじっと画面を見つめている。  何もせず平和的に過ごそうなんて思ったけど、やっぱりだんだんと、欲がこみ上げてきてしまう。  なんの確認も承諾もなしに、突然てっちゃんをソファに押し倒してディープキスを仕掛けた。 「見てる途中だろ」って怒られたらやめるつもりでいた。だけど、てっちゃんは何も言わないし、抵抗もしなかった。  オレに応えるように、その舌が絡みついてくる。  性急に下半身をまさぐると、てっちゃんのそこはすでに硬くなっていた。  ジーンズのジッパーを下ろして脱がそうとすると、てっちゃんは 「自分で脱ぐから」  と恥ずかしそうに言って、じれったい動きで服を脱ぎ始めた。  オレも着ていた部屋着をぱぱっと脱いで、二人共全裸になった。 「……不思議だなあ……」 「え?」 「……いや、なんでもない」  オレの家のソファの上で、てっちゃんが裸体を晒してるなんて、不思議な心地がしていた。  想像の中でなら、何度もこんな風にして抱いたけど。
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