*第八話:肝心な話はいつでも【side Aoba】

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 続きをしようと、再び屈み込もうとした。――それを手で阻まれた。  てっちゃんはソファの肘掛けにもたれ掛かっていた体を起こして、両手でオレの肩を押した。 「……」 「……てっちゃん、怒った?」 「……」 「ごめん、気持ち悪かった?」  てっちゃんは何も答えない。  挑発しすぎて怒らせたかなと不安になりながら、オレはてっちゃんの動向を窺った。  そして思わず目を剥いた。  てっちゃんは何度か深呼吸をして、それから何を思ったのか、オレの股間に顔を近づけてくる。 「えっ?!」  慌ててその肩を掴み、顔を股間から遠ざける。 「ま、待って、てっちゃん」 「……」 「……いいの?」  顔を覗き込むと、てっちゃんはコクッと頷いた。  素直に言えば、オレは嬉しかった。嬉しいんだけど、てっちゃんの顔はなんだかものすごく深刻そうで、全然『いいよ』って雰囲気でもなかった。 「いやいや絶対よくないでしょ。急にどうしたの?」  てっちゃんは困惑したような顔で、オレの目をチラリと見て、俯いた。 「いや、だって、喜ぶと思ったから」 「……」  なんか、今日のてっちゃんは変だ。  妙に素直で、献身的すぎて。  オレにとっては嬉しいことだけど、てっちゃんらしくない雰囲気に、ものすごく違和感を感じる。  その時ふと思い出した。  旅行の一日目の夜に聞いた、てっちゃんの話を。 『なんだか涙が出てきた。母ちゃんが不憫で、可哀想に思えて』 『俺、もっとしっかりしなきゃと思ったんだ』 『自分はちゃんとやれてるのかって、そればっかり、いつも気になって仕方がなくて』 『だんだん息が詰まって、勝手に孤独になってさ』  てっちゃんは言っていた。家族を支えなきゃと思ったら、気負ってしまって空回りしたんだって。
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