*第九話:熱帯夜【side Tetsu】

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 時々一緒に食事をしたり、酒を飲みながら馬鹿な話をしたり、ツーリングに行ったり――アオバとの時間の過ごし方は、基本的には以前と変わらない。  でも、変わったこともある。その一つは、こうして週末の夜になると、必ずどちらかの家に泊まる習慣ができたことだ。  二人で夜を過ごす日は、必ずベッドの中で数え切れないくらいキスをして、体を触り合うことになるんだ。  それをセックスと呼んでいいのかどうかは分からないけれど、俺達の『体で愛し合う時』っていうのは、だいたいそんな感じだった。  最初は緊張して、抱きしめられる度に、全身を石みたいにガチガチにさせていたっけ。  アオバは「何事も慣れだ」と豪語していたけど、実際その通りではあった。今はその感覚にもだいぶ慣れ、ごく自然なことのように、アオバに身を委ね始めている自分がいる。  俺って奴は一体どんな人間なのか、自分でもよくわからなくなる。  二ヶ月前――最初の夜の約束通り、今でもいわゆる『本番』を求められることはない。  それでもアオバは、俺の側でいつも幸せそうにしているんだ。本当に、あいつは一体、俺のどこがそんなに好きなんだろうか。  そんなアオバの様子を見る度に、俺はなんだか不思議な気持ちになる。嬉しいような、胸がジーンとするような――
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