ユ・ル・サ・ナ・イ

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「っ…」 その時、頭を下げていた俺の足を冷たい手が掴んだ。 目を開けると、そこには昨日と同じ女性がいてニタァ…と笑っていた。 その力はとても強く、振り払うこともできなかった。 『フフフ…アイシテルワ』 続けて彼女が呼んだ名前は、曾祖父の名前だった。 …違う。 ……俺じゃない。 ………俺は、曾祖父じゃない。 それは声にならなくて、逃げようにもできなくて。 俺は引きずられるようにして、古井戸の中に連れ込まれた。 「うわあああっ!!」 体がすべて古井戸の中に落ちると、開いていた古井戸の蓋は閉まった。 『ア・イ・シ・テ・ル』 ――古井戸の中で。 その低い声だけが静かに、ゆっくりと木霊していた。 【END】
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