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アマに目をやると、玉ねぎを細長い網に包みながら、小屋の日陰に次々と吊るしていく。
僕はと言えば、乾燥した栗の中から虫に食われたモノをはじいていた。
「ねえ、いつになったらその栗…食べるの?」
『そうだね…2か月、できれば3か月くらいは保存したいな』
この地域の冬は厳しい。川も凍り付く季節になるとジャガイモも栗も甘みが増し、茹でるだけで美味しく食べられる。
「大麦とライムギもここにしまっておきましょう」
作業が終わると僕は壁に立てかけられたシャベルを眺めた。家を建てる際に、地面を掘って壁際を石で固めた方が、かまどの熱気が逃げにくい。
その上に柱を組み合わせて外装を整える形で、新しい家は建っているというわけだ。この仕組みを考えたのはキコだ。
どうやら彼女は、天界でも多数の建築物を作っていたらしく、これくらいの家を建てることくらい造作もないようだ。予算として隊長から貰った金貨を預けたが、全部を材料費に回す辺り、さすが天使と言わざるをえない。
ちなみに入口の納屋は、昔の小屋の資材を再利用した。こうすることで冷気の侵入を防ぎ、ビールや果実酒の入った樽と木炭の束を保管しておくこともできる。
「塩の洞窟にあったコールタールも塗っておきます」
『あれ、大丈夫なの?』
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