夜の訪問者

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 中には小麦、大麦、大豆の袋に、チーズ、瓶詰のピクルス、瓶詰のはちみつ、壁に吊るした牛のベーコン、ヤギ、豚のソーセージ、その他宝石類が置かれている。これらは物々交換で手に入れたものだ。  おっと、奥の部屋のビール樽や果実酒は見なかったことにしてもらいたい。酒を造る場合、多額の税金を払わなければならないが、僕が馬鹿正直に払う奴に見えるだろうか。  あまり大きな声では言えないが火薬も備蓄している。坑道の発破に使うのだが、もちろん無許可で持っていていいものではない。火薬のことに関しては、孤児院の院長の持っていた書物を盗み出して勉強した。  まあ、腹黒い話はこれくらいにして、明日の"取引"の準備でもしよう。  つるはしを壁からぶら下げると、机代わりの木箱の上に、グリフォンから手に入れた果実を麻袋ごと置いた。そして、手袋を取り、ほっと一息つくことができる。 『明日は村に行くし…明け方に温泉にでも入ろうかな』  そう囁きながらパンの残りを口にすると、あることを思い出した。前に役人が妙な立て札を立てていた。 【自宅でパンを焼くのは禁止。専用の設備を作るから金か原料の小麦や大麦を払って購入せよ】     
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