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僕はふらふらになりながら、孤児たちの部屋を開いた。そこには、すでに事切れた大勢の子供たちの姿があった。その中にライナもいた。
『ライ…ナ!』
僕はよろけると右手をつきながら、ライナの側に駆け寄った。彼女は虚ろな目で僕を見ると、力ない笑顔を見せた。
「プチ…ぶじ、だったん、だね?」
『待って、今…手当を…!』
そうは言ったもののライナは吐血し、体も言葉では言い表せない有様になっていた。何をしたらいいかわからず目を泳がせていると、ライナの目に光が宿った。
「プチ…覚えてる? 実は、シングルって、えいゆう…だったの」
『え…?』
それは以前、ライナから聞いた。
呪いの狼カースド・シングルは、実は迫害された人々を率いて権力者に立ち向かった英雄であるという話だ。
この話が好きか嫌いかと聞かれれば、もちろん嫌いだ。英雄など、少し強いお人よしを無責任な大人たちが煽てるための方便だ。
権力者たちは、そのお人よしを陥れ、呪いだの何だのと宣う。権力者もその他の大人たちも等しく弱くて下らない。実に嫌な連中だと思った。
『覚えてるよ。僕は…嫌いって言ったよね?』
「…きらいの…はんたいは…むかん、しん…でしょ…」
『……』
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