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僕は統領と目を合わせた。その姿は"わかっている"と言わんばかりだ。
「"あれ"を使うのですか?」
キコエルの言うアレとは、爆弾のことだろうか。
『相手部隊には同族がいる。火薬を持ち出したりすれば臭いでバレてしまうよ』
「では、一体…?」
そのセリフの直後に、雷の落ちる音が聞こえて来た。僕は目を瞑ると鼻を引く付かせた。
『いい匂いだね。この雨の降る直前の感じ…』
およそ数分後、地面に雨粒が落ち始めた。1つまた1つと、青々とした葉に落ちては濡らしていく。その数は少しずつ増え、下を歩いている兵士の鎧にも落ち、軽い金属音を鳴らした。
「隊長、雨宿りしませんか?」
「軟弱者が。休めるような場所などない!」
兵士たちは歩みを進めると、雨粒は無数の線となって彼らに降りかかった。次々と鎧を濡らし、足元まで湿った様子になった。
僕は藪の中でナイフを握り、息を殺して頃合いを見計らった。兵士たちに気付く様子はない。これはあくまで芝居だろうか。それとも…。
決行か中止かという思いが心の中でぶつかり合った。もし、不用意に飛び出せば槍衾の中に飛び込むようなものだ。かといって中止すれば、二度とこのようなチャンスは巡ってこないだろう。
どうする…どうすればいい。
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