迫りくる戦争

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迫りくる戦争

 僕は天使少女キコエルを自宅に待たせ、麓の村へと向かった。  村とはいっても辺鄙な農村ではない。まず目に留まるのが中央の領事館と教会だ。領事館に領主がいることは少なく、兵士たちの詰め所として使われている。教会も辺境に建っているものとは思えない立派な造りだ。  中央の広場には、酒場とパン屋が2か所ずつ、旅人用の宿屋も店を構え、他にも幾つかの商店が軒を連ねている。民家もあるが、広場付近で生活している人間は高い地位にあるものがほとんどだ。  村人のほとんどは、農地や家畜小屋で働く雇われ農夫たちだが、北西部の住民は手に職を持っている者がほとんどで、荷車と馬車を持っていたり、専用の工房を持っていたりと、他の村人とは違う生活を送っている。  村はずれに目をやると、川沿いに2か所の水車小屋がある。そこでは粉ひきが行われており、今のような収穫の季節になると忙しくなる。  川辺には他にも風呂屋がある。ここはパン屋を兼任しており、パンを焼く際に出た熱を再利用して岩盤浴を楽しむことができるという。     
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