10人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「私ももう年だ。お前と会うことも、もう無いだろう」
『そう…ですか…』
少し間を置くと、隊長は言った。
「実は、君の塩を妻がとても気に入っていてね。多く持ってきてくれてよかった。これでしばらくの間は困らない」
こういう時、どう声をかけたらいいのだろうか。少し考えたが、やはり、ありがとうと答えるのがいいだろうか。
『ありがとうございます』
隊長は静かに頷いた。
『例のものは、いつもの場所に…』
「ありがとう。最後にたっぷりと堪能させてもらおう」
一礼して立ち去ろうとしたら「それから…」という声が聞こえた。振り返ると隊長はそっと僕に近づいて囁いた。
「次に来る男に、今までのやり方は通じない。心せよ」
僕は唾を呑むと、静かに頷く。
それから1週間も経たないうちに、守備隊は村を去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!