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エピローグ
無数の昼と夜は繰り返され、紅葉の季節がやってきた。
洞窟から出た僕は、つるはしと塩袋を担いで歩いていると見覚えのある羽根が落ちた。
『早速、お客さんか』
姿を見せたのは統領だ。彼は木の実をたっぷりと入れた袋を僕の足元に投げた。
『また少なくなったね。神々の戦争が近いのかな?』
グリフォンは唸り声をあげながらこちらを見た。彼も同感のようだ。
『とにかくありがとう。これでいいかい?』
麻袋から全ての木の実を取り出すと、代わりに5つほど岩塩の欠片を入れて手渡した。すると、彼は翼を広げて飛び去った。
獣道を下っていくと、今度は木の影から村々の様子が見えた。
徴用されていた村人たちも半数以上が戻り、農作業や家畜の世話などをしている。再び王国が徴用のお触れを出すこともあったが、今の守備隊長は適当な言い訳をして、最小限の負担に留めてくれている。
おや、子供たちが干し草に乗って遊んでいた。
『家族か…』
僕の名は相変わらずない。両親は幼い頃に僕を捨てたため、孤児院やこの山に育てられた。
ただ、仲間と、新しい家族ならいる。
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