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「充はすごいよ。充のおかげで豊田さんも僕も助けられた」
「そんなことないよ。本当にすごいのは光平だろ?俺だったら、自分のせいにした誰かを助けたいなんて思えなかったもん。それに光平の力こそ誰かを助けるんだよ」
「そうなのかな・・・でも、この力のせいで、時々自分がどこにいるのかもわからなくなるんだ。今のこの気持ちは本当に僕のものなのかなって。本当の僕はどこにいるんだろうって」
「じゃあさ、俺が隣にいるよ!」
「え?」
「そしたら、どんなにどこにいるかわからなくなっても、俺の隣が光平のいる場所だってわかるだろ?」
「・・・やっぱり充はすごいよ」
「よし、決めた!大人になったら、俺が喫茶店やるから隣で光平が花屋をやるんだ!花屋と喫茶店が一緒になった店。どうだ!いいだろ!」
「なにそれ、変な店だね」
楽しそうに語る充を見て、光平も笑いながら言う。
「変わってるからいいんだろ。他に無いからけっこう有名になっちゃったりしてさ。あ、でもそうなると紛らわしいな」
「何が?」
「だって、俺はコーヒー屋なのに名前は『華屋』だし、そっちは黒井光平で『黒いコーヒー』みたいだからブラックコーヒーじゃん?」
「無理やりじゃない?」
「だから、きっとお客さんによく言われるんだよ。『名前逆じゃないですか?』って」
光平も話を聞きながら楽しくなっていた。これが夢を思い描く充の感情なのか、それとも自分の感情なのかは定かではないけど、どちらでもいいと思った。どちらにせよ、こんな気持ちで過ごせるのなら、それは幸せな未来だと思えた。
「お店の名前は?」
「『華屋珈琲店』」
「それって、」
「お父さんの店の名前。字は違うけど、『はなや』も入ってるからいいだろ?」
「うん、いいと思う」
「よし!約束な!」
「うん、約束!」
いつか来る未来を胸に、二人は公園でしたのと同じ様に指切りをして笑い合った。
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