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 初めて訪れる場所に少し緊張しながら、充は呼び鈴を押す。  ピンポーンという音の後に、しわがれた男性の声がインターホン越しに聞こえてきた。  「はい」  「あ、あの、光平と同じクラスの華屋っていいます。光平、君いますか?」  「おお、光平の友達か。ああ、ちょっと待っててくれるかい?」  「はい」  少し待つと、玄関のドアが開かれ、中から白髪まじりの優しそうなおじいさんが現れた。この人が、光平のおじいちゃんかなと思っていると、「どうぞどうぞ」と充を家の中に招き入れてくれた。  光平が学校を休むようになって今日で三日目。心配した充は、先生に住所を聞き、一人この家を訪ねて来たのであった。  奥の和室に連れて行かれると、光平が縁側から庭の花を眺めていた。  「家、大きいね。庭あるの羨ましいや」  「元々おじいちゃんの家なんだ。僕とお母さんがこないだから引っ越してきてて。この花たちもおじいちゃんが育ててるんだよ」  光平の声は、思いの外落ち着いているように聞こえ、充は少し安心した。  「花、好きなの?」  「うん。お母さんは男の子らしくないって嫌がるけど」  ふーん、と言いながら充も光平の隣に座る。  「花はすごく優しいから。辛かったり悲しかったりする時に、それを吸い取ってくれるんだ」  人と違って?とは聞かなかった。代わりに、   「だからよく花瓶の近くにいただけなんだろ?」と問いかけた。  「・・・うん」  「なんであんなこと言ったんだよ?自分が犯人かわかんない、なんて」  「あの時は本当にわかんなくなったんだ。気持ちがすごく入ってきちゃって、別の誰かのものなのか自分のものなのか。ああなっちゃうと、ダメなんだ」  光平の持っているものがそこまでとは思っておらず、超能力者だなどとはしゃいた自分を、充は少し悔やんだ。そして、それと同時に確信したこともあった。
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