第三章

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 「そうか、わかった。誰かそっちに行かせることにする」ジョナサン・ハーベックはそう言って受話器を置いた。初老で彫りの深い顔つきをしている。  「何かありましたか」傍に控えていた男が尋ねた。  「あの二人がトーマスの店に現れたそうだ」  「あの二人とおっしゃいますと……」  「ばか者。ミルドレットとその相棒に決まっているだろう」  「えっ、あの二人は死んだんじゃ……」  「ばか者。FSPが易々と自らの捜査官を死なせるわけないだろう。おそらく、死んだのは身代わりだ。あいつらは生きている」  「では、会長はそれを承知の上で、あのような要求を……」  「当たり前だ。ミルトレッドは今、FSPのウェストシティー支局にいる。管轄外だから簡単には手が出せない。こちらへおびき出すために一芝居打ったのだ。復讐はこれからだ」  「はあ……」  ここはハーベック興業の会長室。巨万の富を築いた会長の部屋らしく、豪華な装飾品であふれている。ハーベックは、レイとミオが立ち寄ったブティックの店主から連絡を受けた。店主はハーベックの手下だったのだ。  一緒にいるのは、ハーベックの腹心であるブライアン・ケントという人物だ。長年ハーベックに仕えている。  「何をしている。早くトーマスの店に行って、詳しいことを聞いて来い。ばか者」  「は、はい。承知しました」ケントは一瞬不快な顔をしたが、すぐに表情を消して部屋を出た。
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