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その日の深夜だった。
「ねえ、レイ」ミオが隣のベッドで眠っていたレイを揺り起こした。
「何だよ」枕もとの時計は午前2時を指している。「まだこんな時間じゃないか」
「お腹すいちゃった。ねえ、近くに開いてる店があるから、何か買いに行こうよ」
「一人で行けばいいじゃんか」
「こんな時間に、かよわい女の子が一人で外出できるわけないじゃない」
「私も女なんだけど」
「二人なら安心じゃない。ねえ、行こうよ」
「しょうがないなあ」レイはしぶしぶベッドを出た。
二人は着替えてホテルの外にでた。深夜ということで、男装ではなく、普段着での外出である。二人が訪れたのは、ホテルの近くにある、深夜も営業している店である。食料品のほか、雑貨も取り扱っている小さな店だ。レイとミオは、食料をしこたま買い込んだ。
店を出た二人は、ホテルへの道を歩いていた。街灯はあるものの、すっかり暗くなっている。レイは大きなあくびをした。
「眠たそうね」ミオは声をかけた。
「当たり前じゃん。こんな時間に起こされたんだから」
「ごめんね。でも、お腹ペコペコだったから……」
「ん?」
「どうしたの?」
「何かおかしくないか」
「何が?」
「ホテルのまわりが騒がしいぞ」
「そう言えば……」
ホテルの近くまで戻ると、人だかりができている。そして消防車が何台か止まっている。
「ひょっとして……」
「火事!」
二人は走り出した。思ったとおり、泊まっているホテルが燃えていた。消防車からの放水で、消火活動が行われている。それを見たレイとミオは、愕然とした。火元となっているのが、二人の部屋だったのだ。
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