第三章

8/14
前へ
/33ページ
次へ
 その日の深夜だった。  「ねえ、レイ」ミオが隣のベッドで眠っていたレイを揺り起こした。  「何だよ」枕もとの時計は午前2時を指している。「まだこんな時間じゃないか」  「お腹すいちゃった。ねえ、近くに開いてる店があるから、何か買いに行こうよ」  「一人で行けばいいじゃんか」  「こんな時間に、かよわい女の子が一人で外出できるわけないじゃない」  「私も女なんだけど」  「二人なら安心じゃない。ねえ、行こうよ」  「しょうがないなあ」レイはしぶしぶベッドを出た。  二人は着替えてホテルの外にでた。深夜ということで、男装ではなく、普段着での外出である。二人が訪れたのは、ホテルの近くにある、深夜も営業している店である。食料品のほか、雑貨も取り扱っている小さな店だ。レイとミオは、食料をしこたま買い込んだ。  店を出た二人は、ホテルへの道を歩いていた。街灯はあるものの、すっかり暗くなっている。レイは大きなあくびをした。  「眠たそうね」ミオは声をかけた。  「当たり前じゃん。こんな時間に起こされたんだから」  「ごめんね。でも、お腹ペコペコだったから……」  「ん?」  「どうしたの?」  「何かおかしくないか」  「何が?」  「ホテルのまわりが騒がしいぞ」  「そう言えば……」  ホテルの近くまで戻ると、人だかりができている。そして消防車が何台か止まっている。  「ひょっとして……」  「火事!」  二人は走り出した。思ったとおり、泊まっているホテルが燃えていた。消防車からの放水で、消火活動が行われている。それを見たレイとミオは、愕然とした。火元となっているのが、二人の部屋だったのだ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加