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レイとミオは、ただ呆然とするしかなかった。
二人の部屋は焼けてしまったので、別の部屋に移された。出火原因はどうやら放火のようである。幸い不審人物が目撃されていたので、二人が賠償請求されることはなかった。
火をつけられた時に外出していたため、二人が被害を受けることはなかった。ただ、それでも二人が肩を落とすような出来事が起きていた。火は隣の部屋に延焼していて、マイケルが大怪我をしたのだ。幸い命に別状はなかったが、長期の入院が必要だった。
特にミオの落胆は大きかった。犯人はジョナサン・ハーベックの手下に違いない。ハーベックはミオの命を狙っている。そしてマイケルが巻き添えを食らった格好になったのだ。買ってきた食料品ものどを通らない様子だった。
「それにしても」気落ちしているミオを見かねて、レイが口を開いた。「どうしてハーベックは、私たちがこのホテルにいることがわかったんだ?」
「さあ……」ミオは、返事をするのがやっとだ。
「変装はしていたし、クレジットカードは使ってないし、後をつけられた様子もなかったし……」
「うん……」
「いい加減にしなよ!」レイは急に声を荒げて言った。「あんたの気持ちはわかるよ。でも、落ち込んでいたって、何も解決しないじゃないか。マイケルのためにも、あんたがしっかりして、ハーベックを捕まえなきゃ駄目だろ」
「……」
「私だってつらいんだよ。そりゃ、お尻をさわられたのは腹がたつけど、それでも、マイケルをあんな目にあわせたハーベックが憎いよ。だから……」
「キーホルダー……」
「え?」
「キーホルダーよ。ほら、ブティックでもらったあれよ。あれに、発信装置か何かついていたのよ。私たちがこっちに着いてから手に入れたものはあれしかないでしょ」
「じゃあ、あのブティックの店主は、ハーベックの手下ってことか?」
「たぶん、そうね」
「ちきしょう……」今度は、レイが悔しがった。動きが読まれていたのだ。自分たちが女だから男装すると、ハーベックは予想していたに違いない。
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